6月に読んだ本

レディ・ジョーカー高村薫
死ぬほど面白いなと思いながら読んだ。キャラクターを描くというよりは、個人を通して組織を描いている感じがした。俺達の戦いはこれからだ――!感があるラスト。警察組織の闇をもっと上の人の立場で読みたいので、平瀬警部補のスピンオフをぜひ(面白いかどうかは知らん)!

『心は孤独な数学者』藤原正彦
数学者がどんな人生を送ったかに重点が置かれていた。どんなことをしたかを知りたかったら別の本を読んだ方がよさそう。



以上です。以上かあ。読みさしの本があちこちに散らばってるな~とは思ってる。ぼちぼちやる。

5月に読んだ本

上田早夕里「夢みる葦笛」
文章が説明的すぎる気がした。設定は面白いのにもったいない。会話文の不自然さも気になった。キャラクターがセリフを言わされてる感がある。あと、作品のテーマはそこまでの展開で十分伝わってるので、わざわざ文字にしなくていいと思う。……何か文句ばっかり書いちゃったけど土着ホラー感のある「眼神」とか、きな臭い時代が舞台の「上海フランス租界チジロ三〇二号」はかなり好きだった。

上田早夕里「破滅の王」
長編ならまだ説明的じゃないかな……と思ったけどそんなこともなかった。こういうもんだと割り切るしかないのかな。真木須博士云々のところは完全に「私は好きにした、君らも好きにしろ」だった。

G.ローデンバック「死都ブリュージュ
町の描写が最高すぎる。陰鬱な気分がそう見せているのか、灰色の町が影響を与えているのか。そこのところをもう一回読んで確かめたいけど、返却期限が迫っているので返してきます。

山之口洋オルガニスト
めちゃくちゃに面白かった……!!題名がぴったりすぎる。テーマはちゃんと伝わってくるのに一切説教臭くない。音楽やってる人ならもっと楽しめたんだろうなと思う。それが悔しい。

藤原正彦 小川洋子「世にも美しい数学入門」
知らない世界の片鱗を少し覗けた気がする。

3、4月に読んだ本

NHKスペシャル班「グリコ・森永事件 捜査員300人の証言」
この事件を題材にした舞台を観て読みたくなった本。こんな体制はもう改善されてると思いたい。これの三億円事件版が読みたいけど無理かな。

ゴジラ生物学序説」
全員が全員大真面目にゴジラについて論じている変な本。何人かサンプルを採取したいって書いてて面白かった。

中井紀夫「山の上の交響楽」
表題作がとてもよかった。他の作品も発想がすごい。すこーんと抜けてる感じがする。

須原一秀「弱腰矯正読本」

栗原康「大杉栄伝 永遠のアナキズム
社会主義者が出てくる舞台を観て、それぞれの思想の違いがよく分からん!となったので読んだ。アナキストっていっても全員考え方が一緒ってわけではないんだな。次は幸徳秋水だ!

松村圭一郎「くらしのアナキズム
アナキズムって何だっけ、と混乱してしまった。続けて読む本ではなかったかもしれない。現代でアナキズムを実践するなら、という内容は面白かったのでまた読み返したい。

山尾悠子編「須永朝彦小説選」
美少年につぐ美少年でお腹いっぱいになった。それでも飽きさせないのがすごい。

アゴタ・クリストフ悪童日記
恩田陸の「三月は深き紅の淵を」に出てくる短編はこれのオマージュだったのか!ちょっと興奮した。母親の元にいたらこうならなかったのか、戦争がなかったらこうならなかったのか、それともどうあってもこうなってしまうのか。

井上雅彦監修「異形コレクション ギフト」
上田早夕里の「封じられた明日」が一番印象に残ってる。帝都!昭和!浪漫!という感じの世界観がめっちゃいい。一朗主人公でまた書いてほしい。

G.K.チェスタトン「木曜の男」
推理小説というよりSFっぽい。展開は一本道だし訳も読みにくい。でも各曜日のキャラクターが面白かったので最後までたどり着けた。ストーリーがメインではないんだろうなー。

S.ツヴァイク「チェスの話」
「見えないコレクション」「書痴メンデル」「チェスの話」が印象に残った。常軌を逸するほど何かに夢中になっているキャラがいい。

パラドックス定数の有料配信を観たよ②

※ややネタバレ


『インテレクチュアル・マスターベーション
あらすじが難しいな。平民社に集う社会主義者七人がわちゃわちゃしてる話です(違う)。冒頭とラストのセリフに重複してる部分があるんだけど、全く印象が変わってうわぁ……となった。
一番好きなのは屋上演説シーン。山川均の「よーく聞け、この殺人者共めが!」から始まる演説は、思わず暗記したくなるほど格好良い。声の張り方がめちゃくちゃいいんだよな。演説してる人以外の細かい演技もよかった。木下尚江の高所恐怖症っぷりが可愛い。
可愛いと言えば大杉栄。自由!という感じでとてもいい。笑い声がほぼ奇声。幸徳秋水のことを「嵐のあとの深い空のような男」と表現するところもいい。ぴったり。

気になったところ
・演説って実生活でちゃんと聞いたことないけど、最初から最後まで聞いたら「やってやろう!」っていう気になるのかもしれない。それほど耳触りのいい言葉が使われてるってことなのかも。
・みんな衣装のどこかしらが赤いんだけど、幸徳秋水はコートの裏地が赤。他のメンバーは表面に赤があるので、目立たない場所にあるのは何か意味がありそう。(追記:チーフもシャツの下も赤いの見逃してた……でも赤い裏地って意味ありげじゃない!?)

『五人の執事』
広い館を歩き回る執事たちの話。ストーリーの筋を追うのが楽しい作品だった。観終わってからも、あの方は本当に死んでるの?どこからどこまでが妄想なの?執事Rは存在するんだよね?と次々謎が湧いてくる。かなり好きです。
執事たちの微妙なパワーバランスを推し量るのも楽しいし、印象が変わっていくのも面白い。後半になってそうではないと分かるんだけど、西原さん演じる執事Rの不安定さがよかった(生きてらっしゃいます、って繰り返すシーンとか)。あと、十枝さん演じる執事Qと二人で食事するシーン最高。

好きなとこ
・ちょいちょい出てくるウツギが印象的だった。調べてみると、幹の中が空洞なことから空木とも書くらしい。この作品にぴったりすぎない?五月になったら実際に見に行きたいな。
・「廊下の奥に悪夢が立っている」「私の周りから一歩だけ世界が遠ざかる」など、日記の文章がよかった。どこのゴシック小説だ。

東京裁判
東京裁判における弁護人たちの話。ここまで全部あらすじが下手くそで申し訳ない。多分一日の出来事なので、五作品の中では一番タイムスパンが短いのかな。そのせいか、あっという間に観終わった記憶がある。ちょっと物足りないと感じたのはそのせいかも。内容はギュッと凝縮されているので見応えはあった。これから始まるんだ、と感じさせるラストがすごい好き。
頭も回れば口も回る末永さんよかったなぁ。資料に突っ伏したり、やたらお腹を減らしたり、感情のブレーキを掛けられるところがすごくいい。おこがましい言い方だけど、どうにかして幸せになってほしい。


全部観終わって
ホームページの公演写真見てニヤニヤ、パラブログ整数見てニヤニヤ、待ち受けの捜査員見てニヤニヤ……日常がパラドックス定数に侵食されている!
それぐらいどの作品も面白かった。人と人が関わって変化していく様を眺めるのは楽しい。いつか生で観劇したい!(配信ももっと増やしてほしい~)


余談
『怪人21面相』は最初呆然としてしまった。展開に全く容赦がなくて、これ生で観たらどうなっちゃうんだろうと思った記憶がある。一番好きだなぁ。あとこの作品は白砂さんが本当にいい。身近にいたら恐ろしい(この人の言うことに従ってたら間違いないって思わされそう)んだけど、画面の向こうから見てる分には魅力的。余裕がなくなっていく様子も最高だった。自分のなかで一番あとを引いてるキャラ。
白砂さんは割とサラッと酷いことを言うんですが、『東京裁判』の鵜沢さんもそんなところがある。言葉でコントロールするのが上手い。その言葉が効果的だって分かってて発言してる。最悪で最高。
ここまで書けばお分かりですね。そう、私は西原さんが演じるキャラクターがめちゃくちゃ好きです。白砂さんは言わずもがな、執事Rも木下尚江も色気がすごい。尚さんは赤シャツが似合いすぎだ。
キャラクターの魅力もあると思うけど、その演じ方も好きだなぁと思う。そのキャラだったらそうするよな、というか。わざとらしくないっていうのかな……分からん!全然関係ないけど『怪人21面相』のとき着けてた銀縁眼鏡めちゃくちゃ似合ってましたね!(脈絡なくなってきたのでおわり)

『阪急タイムマシン』を読んで

編み物好きの野仲さんが、幼馴染みのサトウさんと阪急電車で再会する話。絵柄から想起されるようなほのぼの系ではなく、どちらかというと抉ってくる感じ。油断してるとえらいことになる(なった)漫画だった。読むだけでしんどくなる漫画って本当にいいものですね。
阪急電車と関西弁が舞台装置として完璧に機能してるので、馴染みのある人にはおすすめ(もちろん馴染みない人も楽しめる)。阪急ええよね、私も好きや。運賃安いし。

印象に残ったのは、「またね」と「バイバイ」の使い方。「またね」には「また会いたいね」という気持ちが少なからず含まれていると思う。「バイバイ」とか「さよなら」は、その挨拶を意識的に選択してる気がする。もう会うことはない雰囲気が漂う。
でも、「またね」って言っておきながら二度と会わないことなんて当たり前にある。それと同じで「バイバイ」って言っておきながら、また会うこともある。偶然また阪急電車で会うにしても会わないにしても、このラストはすごく好きだなぁと思った。

https://www.kadokawa.co.jp/product/322011000174/



※ここからネタバレ

途中から小中学校の記憶がぶわっと甦って、涙が止まらなくなった。許したくない記憶、許されないことをした記憶、誰にでもあると思う。詳しく話したくないというサトウさんの気持ちはよく分かる。でも、そのままでいいよ、と許された気がした。
それにしてもやった方は忘れてるって本当だな、と思った。私にも忘れたことにしてる記憶は絶対ある。あの頃から変わってないんじゃないの?って思ったらぞっとした。怖い漫画だな~

パラドックス定数の有料配信を観たよ①

※ネタバレがめちゃくちゃあります


三億円事件
実在の事件をモデルにした演劇作品。時効成立までの三ヶ月を捜査員たちの視点で描いている。どっちかというと事件の真相解明より、捜査員同士のやり取りがメイン。怒鳴ったり、懐柔したり、庇ったり。関係性が変化していく様子がとても面白かった。

どうでもいいけど馬見塚警部の「起立!はい相互に礼!」がテンポよくて好きだな。ザ・組織の上に立って指示する人という感じ。みかん農家、似合うと思いますよ。同じ所轄チームの高瀬巡査部長は地味にキャラがいい。飄々としてるくせに情に弱くて、事件関係者にも先輩刑事にも肩入れしちゃう。華山に頼れたらよかったのにね。

本庁チームでいうと、やっぱり白砂と宮内の公安コンビがよかった。最初はいけ好かない二人だなと思ってたけど、途中白砂が宮内を心配し始める辺りから印象が変わった。何だか感情が大きいな……?この二人の関係性は上手く説明できないけど、
宮内→白砂:あなたの右腕になりたい(対等な関係になりたい)
白砂→宮内:何もできない子供(守らなければならない存在)
という感じなのかな。守らなければならない存在という認識が崩れていくのがいいですね。そして白砂さんは何処へ……という気持ちを抱えたままま『怪人21面相』へ。


『怪人21面相』
白砂さん……白砂さん……!!観終わってそんな言葉しか出てこない。この『怪人21面相』は、グリコ森永事件を題材にした犯人視点の話なんですけどね……。
犯人グループに白砂さんがいるのはまあいいよ(やりそうだし)。でも最後どうなるかほんまに想像できひんかったんかな。宮内……。焼身自殺をした理由はもう誰にも分からないけど、白砂さんと会ってしまった影響は確実にあるんだろうな、という気がする。

後半は呻きながら観てた。幸村の背景を知って手を拭う蓮見の反応が本当にきつい。蓮見のことが一気に嫌いになるとともに、じゃあお前はどうだ?と問われている気持ちになった。キャラクターの事情が判明するシーンって、大体納得とか同情することが多いかなと思うけど、これは観客を突き刺してくる感じ。脚本に容赦がない。

また白砂さんの話に戻るんですが、言葉で場の雰囲気や人をコントロールしている気がする。『三億円事件』でも「家族が死んだら誰でもそうなります」とか言って場を冷ましてたし。それが効果的なセリフだと分かった上で発言してるんだろう。
今作ラストの「何で宮内が死んでお前が生きてるんだよ」(うろ覚え)というセリフは本音なんだろうな。最悪で最高。そこから「権力好きか?」につながる流れもね……幸村の表情も相まってぐわぁぁぁとなる。
もうね、白砂さんのことがよく分かんないんだよね。何でそんなに宮内に執着してるの?幸村は宮内の代わりなの?依存してるのは白砂さんの方?こいつは俺がいないと駄目なんだという存在が必要なの?疑問があとからあとから湧いてくる。アリジゴクみたいなキャラだな。

言語化できない細かいこと
・「想像」というキーワード
想像できない幸村、演者の表情が分からない(ので想像するしかない)二階からの演技、想像したくない結末(白砂さん壊れちゃってない?)
・写真破くくだり
元カノの写真を見つけて嫉妬した現カノっぽい
・権力について
幸村は嫌い、宮内は好むと好まざるに関わらず持っているもの、白砂は俺も嫌いって言ってたような……


以上です!とりとめがない!次は『インテレクチュアル・マスターベーション』観よ~

2月に読んだ本

井上雅彦編「異形コレクション悪魔の発明
廣済堂出版異形コレクション。最後の短編四つがよかった。

黒井千次「珈琲記」
珈琲にまつわるエッセイ集。鼻につきそうでつかない(でもちょっとつく)絶妙な文章だった。

三浦しをん「マナーはいらない」
エッセイのノリが好きでよく読んでいたけど、固い題材でもそのノリが変わらなくてすごい。

恩田陸「歩道橋シネマ」
日常に紛れる変な場面を冷静に書いているところが好き。

カール・イグレシアス「感情から書く脚本術」
図書館で借りた本。客の心をつかむ方法が具体的に書かれていて、とても参考になった。手元に置いておきたい。

電車が来ない

西大路のホームには待合室がない。私は吹きさらしのベンチで、先ほど買った本を開いていた。手がかじかんでページが捲れない。最終手段としてリュックで温めていた手袋を装着する。
何とか五ページほど読み進めたところで、私は電光掲示板を見上げた。山科、京都間で動かない矢印。焦りと不安と苛つきが込み上げる。
向かいのベンチでは、若いのかそうでないのかよく分からない女性がぼうっとしていた。首をすくめながら線路の方を眺めている。何となく綺麗な人だな、と当たりをつけ手元に視線を戻す。あと何ページ読めば電車が来るのだろう。
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1月に読んだ本

恩田陸 山田正紀「SF読書会」
本屋でたまたま見かけて買った。復刊してくれてありがとう!おかげで常野シリーズ読書会も読めたよ!

恩田陸「薔薇のなかの蛇」
面白かったんだけど、またこういうパターンか…と感じてしまった。装丁は最高。挿絵も惚れ惚れしてしまう。

森奈津子「耽美なわしら」
バカバカしいけどキャラがいいから読んじゃう。

平山夢明「恐怖の構造」
作者が何を考えて小説を書いてるのか分かって面白かった。

加門七海「たてもの怪談」
引っ越しにまつわるあれこれと、建物の不思議な話が少し。家選びって条件を気にしだすと大変だな。

横光利一「日輪・春は馬車に乗って 他八篇」
「蠅」の印象が強い。不条理なようでいて、出来事をただ書いてるだけのような気もする。「火」「御身」はずっと不穏。「笑われた子」「赤い着物」は不穏通りこして不気味。よい。

11、12月に読んだ本

11月
藤野香織の「おはなしして子ちゃん」は人から借りた本。ミイラのやつは平成怪奇小説傑作集で読んだことがあったので、この人だったのか~という感じ。めちゃくちゃ楽しみにしていた「異形コレクション 狩りの季節」は期待以上の面白さだった。電子書籍遠藤周作の「沈黙」を読む。うーん、ざっくり分かるキリスト教みたいな本がほしい。京極夏彦の「塗仏の宴 宴の支度」は今はスルー。長いわ。松浦理英子の「ナチュラル・ウーマン」はやっぱりめちゃくちゃ面白かった。他のも全部読もう。

12月
「塗仏の宴 宴の始末」は、ここまで読んでこんな結末!?となった。あとは同人誌をいっぱい読んだかな……?

分厚い本を結構読んだかな。京極夏彦とか京極夏彦とか京極夏彦とか。もう当分いいです。同時進行で読んでる本がいっぱいあるので、まずはそれからやっつけていきたい。積読もね!