『阪急タイムマシン』を読んで

編み物好きの野仲さんが、幼馴染みのサトウさんと阪急電車で再会する話。絵柄から想起されるようなほのぼの系ではなく、どちらかというと抉ってくる感じ。油断してるとえらいことになる(なった)漫画だった。読むだけでしんどくなる漫画って本当にいいものですね。
阪急電車と関西弁が舞台装置として完璧に機能してるので、馴染みのある人にはおすすめ(もちろん馴染みない人も楽しめる)。阪急ええよね、私も好きや。運賃安いし。

印象に残ったのは、「またね」と「バイバイ」の使い方。「またね」には「また会いたいね」という気持ちが少なからず含まれていると思う。「バイバイ」とか「さよなら」は、その挨拶を意識的に選択してる気がする。もう会うことはない雰囲気が漂う。
でも、「またね」って言っておきながら二度と会わないことなんて当たり前にある。それと同じで「バイバイ」って言っておきながら、また会うこともある。偶然また阪急電車で会うにしても会わないにしても、このラストはすごく好きだなぁと思った。

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※ここからネタバレ

途中から小中学校の記憶がぶわっと甦って、涙が止まらなくなった。許したくない記憶、許されないことをした記憶、誰にでもあると思う。詳しく話したくないというサトウさんの気持ちはよく分かる。でも、そのままでいいよ、と許された気がした。
それにしてもやった方は忘れてるって本当だな、と思った。私にも忘れたことにしてる記憶は絶対ある。あの頃から変わってないんじゃないの?って思ったらぞっとした。怖い漫画だな~