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南向きに座っている人もいれば、東向きに座っている人もいる。十五分から三十分、ただ黙って座っているだけの妙な時間。時折ピピピッピピピッという音が響くが、すぐさまスタッフによって止められる。出口に向かう人を何とはなしに目で追っていると、同じような動きをしている人が私の他にもいることに気付いた。自分の行動が急に恥ずかしく思えて、傍らのストップウォッチに目を落とす。あと九分。スタッフが「今日は時間がゆっくり過ぎていく」と話しているのが聞こえる。定位置が私の斜め前なので、正面を向きづらい。目の前を横切る度にあくびをしてやり過ごすが、連発しすぎて涙がにじんできてしまった。窓と床の境目をぼんやり眺めているうちに、ストップウォッチがあと一分になる。「もうちょっとですね」と声をかけられ、周りの人たちがそわそわしだす。鳴るぞ、鳴るぞと身構えていると、数秒で音が止められた。