『五人の執事』の感想(あと劇団の人たちについて)

『五人の執事』はパラドックス定数という劇団が2009年に上演した作品です(https://pdx-c.com/past_play/five-butler-2009/
配信はこちらから(https://www.xcream.net/item/17557

忘れたいことは忘れたままにしておいた方が幸福なのか、それとも現実に目を見開いた方が幸福なのか。

題名通り五人の執事が出てきます。玄関に立つ執事K、鍵を任されている執事N、日記を持つ執事B、主を騙る執事Q、給仕を担う執事R。登場する執事は全員名前がない。イニシャルにはそれぞれ意味があるんだけど、ネタバレなのでここには書きません。観たら分かるかもしれない。
とにかく決められた枠組みで動く執事の姿を追いかけるのが面白い。「この執事の動きはそういう意味だったのか」「この人物の口癖はそういうことか」と謎が徐々に明かされていく過程が楽しい。観れば観るほど発見が増えていきます。

※以下ネタバレ





何も考えないでいただけますか、と執事Qが執事Kに頼むシーンがあるんだけど、そんな完全に何も考えないというのは無理だよなと思った。人間考えたくなくても頭のどっかで考えてしまうものだし。それを執事Kに強いる執事Qと執事Rは酷だ。
そして「あれから十八回、空木の花は見事に咲き誇りました」という執事Rのセリフに愕然となった。現実から目を背けたまま十八年というのは中々重い。
印象に残ってるのは執事Qの「悲しみは人に任せてはなりません。まやかしに任せてもなりません」というセリフ。悲しみは自分で背負わないとどこかで破綻が訪れる。にもかかわらず「私が引き受けます」という執事Rに、それでいいの?それが職務なの?と言いたくなった。
面白いなと思うのは執事たちの関係。十枝さん演じる執事Qは西原さん演じる執事Rのことをよく思ってないんだなとか、執事Qは植村さん演じる執事Kにだけ露骨に態度が違うんだなとか。端から観てるとよく分かる。
『五人の執事』はとても好きな作品なんだけど、いかんせん分からない部分が多くて……。この解釈が合ってるか全然自信がない。せめて台本を読ませてくれ!となるんだけど、答えは別に要らないような気もする。あれこれ考えるのが楽しいので……。再演してくれないかな。





これは余談なんですが、私十枝さん演じる執事Qが日記を読む場面がめちゃくちゃに好きなんですね。内容ももちろんなんだけど、声のトーンも言い回しも語尾の震わせ方も全部好きで。そして西原さん演じる執事Rに遮られて向ける視線が最高。激昂するわけでもなく静かに「邪魔をなさらぬようにとお願いしたはずです」と言うシーンがもうはちゃめちゃに好き。
十枝さんは現在お休みされてるんですが、有料で配信されてる五作品には全部出演されています。特に私はインテレの山さんの大声が好き。あんなに聞いていて心地良い大声は中々ない。執事Qの大声もよかったですね……!

この際なので他の劇団員の人も紹介しますが、皆さん演技が魅力的なんですよ。有料で配信されてる五作品しか見てないけどそうなんです(ハマったのが今年の始めだった)。
まず一番好きなキャラが怪人21面相の白砂さん。西原さんが演じてるんですが推しキャラです。好きっていうより推しです。白砂さんについて語り出すと止まらなくなるのでここでは書かない。一言でいうと最悪で最高。
小野さんは東京裁判の末永さんがとても好きです。可愛くて格好良い。お願いだからチョコレート食べて……!と言いたくなる。巣鴨で分厚いステーキも食べてくれ。
井内さんはインテレの大杉栄が印象に残ってます。やたら飛び跳ねるし、笑い声がほぼ奇声だし、感情が全面に出てるキャラ。そしてそれが大杉栄のイメージとぴったり……!ラストは圧巻だった。あと三億円事件の宮内巡査部長もね!
植村さんは今作品の執事Kがよかったな~と思いました。佇まいが似合うというか。所作が綺麗。あと余裕を失っていく様子もよかった。怪人21面相の蓮見さんも印象に残ってます。あの場面の幸村に対する反応……!

なんか偉そうに色々書いてしまった……。パラドックス定数がとにかく好きだという文章でした。もっと観たいよ~~~~~