〈どこでもないところ〉は存在する

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ダイアナ・ウィン・ジョーンズ「九年目の魔法」
大学生のポーリィは、自分の記憶が二重になっていることに気付く。この得体の知れない喪失感は何なのか。それを探るために、九年前の記憶を遡っていく。
チェリストのリンさんと出会ったのは、見知らぬ人の葬式だった。退屈な葬式から抜け出した二人は空想を語り合い、急速に仲を深めていく。それから何かとても恐ろしいことが起こり出す――。

みたいな話です。どこからどこまでが本当なのか、読んでるこっちまであやふやになる感じ。「記憶」が全体のキーワードになってる気がします。設定がすごいややこしいので、何回か読まなきゃ理解できないと思うけど、それが楽しい。あれはこういうことだったのか!ってなるのが快感。何回読んでも楽しめる、するめみたいな本です。

設定も面白ければ、キャラも魅力的。メインの二人(リンさんとポーリィ)は多分14歳ぐらい離れてるんだけど、やり取りが面白い。リンさんがわりと子供っぽいのがいいのかもしれない。
ちょっと頭がおか……独特な性格もよい。車を運転したり、危険な場面になると口が悪くなるところとか、少し卑怯なところも魅力(?)。
少なくとも王子様のイメージではない。本文中に「リンさんの髪の毛は風に舞わない」的な描写があったせいで、冴えないおじさんみたいなイメージで読んでた。まぁでもこれは意図的だと思います。読んで確認してみてくれ!

好き勝手書きましたが、ファンタジーやSFが好きな人はきっと刺さると思います。あと海外の児童文学が好きだった人とか。難しい設定が好きだという人にもぜひ読んでほしい。初読で理解できるかチャレンジだ!
でも話自体がめちゃくちゃ面白いので、設定が理解できなくても問題なし。何回も読んで理解できる部分が増えると、もっと楽しくなる!そんな本です。