上半期に観た演劇(配信含む)

『しめんげき』カムカムミニキーナ(配信)
役者は四人。身体表現が主役の演劇だなと思った。一本目は「しんとくまる」。いつどろどろのぐちゃぐちゃになるんだろうと思ってたら、あっさり終わって拍子抜け。身毒丸と勘違いしてた。めっちゃ道徳的な話だ。地蔵(観音だったかな?)の高音がよかったな。

二本目は江戸川乱歩原作の「パノラマ島」。原作の文章を体に乗せて演じる感じが楽しい。パノラマ島の仕組みをあんな風に表現できるのすごい。妖しい感じが伝わってくる。

 

『関数ドミノ』イキウメ(サンケイホールブリーゼ
あらすじ説明するのが難しい……。なんかずっとモヤモヤしてるんだけど中々言語化できない。ある登場人物が言葉で救われたように見えたのがモヤモヤしてるのかもしれない。

最後の語りも余計な付け足しのような印象を受けた。そんな急に観客に語りかけてこられてもな。話自体は面白かったけど。

 

『サカシマ』廃墟文藝部(YouTube
こんなひたすらめちゃくちゃな気分になる演劇もあるんだなと思った。面白いか面白くないかの判断がつかない。

ラストに至るまでの道筋(?)は綺麗だった。オチが読めても楽しめる作品だったと思う。ただ面白いかって聞かれると口ごもってしまう。

先生と助手とイェーイみたいなギャルのキャラクターはよかった。こういう感じの圧を出すギャルいるな~という気持ちになった。

先生の口癖は「どうでもいいけど」という言葉なんだけど、本当にどうでもいいと思ってるのか!?と問い詰めたくなってしまう。思ってそうだな。あと、この作品で一番ヤバイのは多分助手。何なの?という気持ちになる。

 

『nextmove』serialnumber(YouTube
プロ棋士を目指す二人の話。将棋のプロを目指すにはお金がいる。それを「親から投資してもらってる」と言うのが生々しいな~と思った。キャラが見た目通りじゃないのがよかったな。

 

『nursery』serialnumber(YouTube
ミステリー感が強い作品だった。二重人格のキャラが少しステレオタイプかも。余談ですが酒巻さんという名前どっかで見たことあるな~と思ってたら、パラドックス定数で客演してた人か!過去公演写真で何となく見覚えがある。若いときの演技も観てみたいな~

 

『あーぶくたったにいたった』(Youtube
別役実作品を初めて観た。不条理劇自体もほとんど初めて。慣れると面白く感じられそう。

9/25

文フリに出店するためOMCビルみたいなところに行く。ビルの名前を地図アプリに打ち込んでも出てこなくて焦った。OMMビルか……。

何とかたどり着いて設営の準備をする。机の半分って厳密にはどの辺なんだろ……と思いながら布を敷く。

本(今回は一冊)とポスター(A4に印刷してバインダーに挟んだだけ)をどう置くべきなのか。店番してくれる人の意見も聞きつつ設営。ぬいぐるみもセッティングしてとりあえずイスに座る。隣の人に挨拶するタイミング逃した。

ところで今回イスは一脚のみ(追加したいと思ったときには変更期限を過ぎていた)。なのでめっちゃ忙しなく店番をすることになってしまった。会場をふらふらしてた時間の方が長かったんじゃないかな……。

それでも何冊か手売りできて嬉しかった。でも接客は永遠に分からんな。「いらっしゃいませ」って言った方がよかったのかな?通りかかる人には一応会釈してたけど、声出さないと気付かないもんな……。

まあいいや。今後の課題にします。関係ないけど隣の隣の隣くらいから「ゾンビでーす、活きのいいゾンビありまーす」って聞こえてきたのは面白かった。あの呼び込みいいなぁ。

そんなこんなでフリーペーパーは結構捌けた。本もまあ……まあね……という感じ。私がいない方がよく売れるってどういうことなん?

遊びに来てくれた友達が終わりまでいてくれたので一緒に撤収のち帰宅。荷物はめちゃくちゃ増えた。

9/11

そこ文さんに行く。暑すぎて誰も歩いてない。それともいつもこんな感じなのかも。店内に自分の本が置いてあることを確認。一冊も売れてなかったけどまあそういうもんでしょう。

そのあと少し歩いたところにあるカフェでコーヒーとアイスを食べる。生き返った。ここめちゃくちゃ高いけどはちゃめちゃに美味しいんだよな。

帰りに本屋でユリイカ9月号と営繕かるかやの最新刊を買う。足が限界だったけど古本市にも寄って帰った。髪がぼさぼさ。

晩ごはんを済ませてオンラインイベントを見て回る。ジャンル迷子オンリーは面白そうなものがいっぱいで困る、という気持ちは昨年も味わったな。書き込みや感想などいただけて嬉しかった。

このまま寝るつもりだったのに、うっかり推しキャラのセリフを呟いてしまって目が冴える。ぼかさずに話すことがこんなに気持ちいいとは!

8月に読んだ本

『パンとペン 社会主義者堺利彦と「売文社」の闘い』黒岩比佐子
この人は行動が思想を表してる気がする。紹介されてるエピソードが一々よくて、好感度が爆上がりしてしまった。でも本当にそうだったかは分からないからね。
それにしてもこの時代の社会主義面白いな~!演劇きっかけで調べ出してこんなにのめり込むとは思わなかった。荒畑寒村の先生呼びはそういうことか!とか細かいことが分かっていくのが楽しい。次は山川均の自伝読みたいな。

ユダヤ警官同盟マイケル・シェイボン
とにかく比喩が多い。「~のような」だらけの文章なのに、読んでるとだんだん面白くなってくるのが不思議。警察官二人の見た目がかっこよくないのがいいなと思った。

『巨岩と花びら』舟越保武

大杉栄追想

『無脊椎水族館』宮田珠己
まえがきの「いろんなことはそのうちなんとかなるだろう」という文章が好き。作者とモアレ氏のやり取りもいいなと思った。ザ・適当。

年内のイベント予定(仮)

9/11(日)
『そこの路地入ったとこ文庫』cafe yokoso
「ただの短編小説」で委託参加します。折本で参加したことはあるんですが通常回は初めて。色んな同人誌が集まる雰囲気のいいイベントなのでぜひ行ってみてください!余力があれば当日現地に行きたいなと思ってます。
参加サークルさんの一覧など→(https://note.com/sokoroji_kyoto/n/nc51da0fb0bf8

『まだまだ!ジャンル迷子オンリー』pictsquare
同日に開催されるオンラインイベントです。同じく「ただの短編小説」で参加。新刊があるかどうかは現在不明!
めちゃくちゃ見ごたえのある特設サイト→(https://kusamurakei.wixsite.com/wonder2

9/25(日)
文学フリマ大阪』OMMビル
初のリアルイベント!既刊と「二人組短編集」という新刊を持って行こうと思ってます。さすがに間に合ってるはず。間に合っててくれ。
詳細→(https://bunfree.net/event/osaka10/

11/5(土)
『紙本祭』pictsquare
オンラインイベントです。既刊と新刊を売る予定。あと何かポストカード的なものを作れたらいいな~
詳しくは→(https://pictsquare.net/ftq8f7k5uf2mjvlttbjt6i79nihsb14h


来年の話になりますが、余裕があったら文フリ京都に出たいな~と思っています。みやこめっせ周辺ってほどよい田舎感があって好きなんですよね。あんまり賑わってないイメージ(悪口ではない)。
予定が変わる可能性は大いにありますが、どっかで見かけたらよろしくね!(https://potofu.me/tamon

『東京裁判』の感想

東京裁判』はパラドックス定数という劇団で何度か上演されてる演劇です(https://pdx-c.com/past_play/imtfe-2009/
配信はこちら(https://www.xcream.net/item/17558

東京裁判を題材にした作品。パラドックス定数の演劇を観るたびに思うけど、題材にしてるからってそのままなぞってるわけではないんだよな。実際の出来事は出来事として置いといて、そこから話をふくらましてる気がする。

この作品における弁護人は五人。弁護団代表の鵜沢聡明、弁護士の資格を持たない水越英世、未来の外交官で通訳の星之宮衛、サポートに回ることが多い柳瀬秋午、口も回れば頭も回る末永令甫。目的や考えは違えど今この場にいる五人がどう変化していくのか。弁護する意味、今ここにいる意味、東京裁判をやる意味とは何なのか。何回観てもはっきりとした答えが出ないなと思った。

実は最初観たときピンとこなくて、物足りないとさえ思った記憶がある。多分話してる内容がよく分からなかったんだろうな。五回ぐらい観てようやく密度の高さに気付いた。めっちゃ面白いじゃん!!!

※以下ネタバレ





末永さんはアクセル踏みっぱなしのようで、肝心なところでブレーキを掛けることができる人。コミンズカー検事との論戦(ほぼ喧嘩)が本当に格好良い。「法律家としての気骨を持っていただきたい」というセリフは末永令甫という人物をよく表してるなと思う。体現してるもんね。

戦争犯罪人とされている人たちの中には、自分が有罪だと思っている人もいる。鵜沢さんは多分そういう人の意思を尊重したいと思ってるんだけど、末永さんは「死にたい人間を死なせることが意思の尊重だとは思えません」と言っている。この場面は二人の考え方の違いが表れてるなと思う。最終的に鵜沢さんは全員救うと決意するんだけど。

鵜沢さんは作中で一番変化する人だと思う。後半怒りという感情を露にするシーンがあるんだけど、そりゃそうだよなと思った。戦争に何の感情も抱いていない人間なんて(少なくともこの場には)いない。
あと鵜沢さんのセリフはどことなく白砂さんみを感じるなと思った。「無責任だとは思いませんでしたか?」の言い方と「後悔はしないでくださいね」に続く言葉よ……!柳瀬さんに発言させようと思って言ったセリフなんだけどそれにしたってさぁ……。

水越さんは裁かれたいという父の思いを尊重してほしいと考えてるのかな。ちょっとこの辺合ってるか自信ない。でも本当は救いたいと思っている。だから最後の「約束します、全員救いますから」という鵜沢さんの言葉と、「絶対死なせないって親父に言っとけ!」という末永さんの言葉は嬉しかったんじゃないかと思うけど分からない。
星之宮さんは弁護団の癒し。とにかく顔に出るし態度に出るし素直。「権力を振りかざすならな、自分の国でやれ!」という言葉には異議なし!と言いたくなった。この人が弁護団にいてよかったなと思う。

あとコミンズカー検事って実在したんですね!?今回調べてへえと思った。作中では末永さんと論戦を交えてる(ほぼほぼ喧嘩)んですが、人を煽る言葉をめっちゃ使うのでマジで腹立つんですよね。舞台上にはいないのにいるように思えてくる。
そう思えるのは視線の演技のおかげでもある。パール判事の方を見たり、ザリヤノフ判事が起きてるかどうか確認したり、コミンズカー検事の方を睨んだり。あと誰かが発言してるときにそちらを見たり見なかったり。視線を追うだけで何が起きてるのか、どういう感情なのか何となく分かるのがすごい。

何回観ても慣れないのは柳瀬さんが語る場面。毎回心臓が締め付けられるような気持ちになる。これは観てる方もだけどやってる方もしんどいだろうなと思う。
その場で聞いてるように入り込んでしまうので、何で同時通訳が止まるの!?と本気で思ってしまう。柳瀬さんの言葉が届かないのがどうしようもなく悔しい。
少し前の場面で「いくら表現の自由が保証されていても、話を聞く意思のある人間がいなければどうにもならない」と柳瀬さんが言ってて、それは本当にその通りだな……と思った。でも少なくとも他の四人には伝わってるし、『東京裁判』を観てる人にも伝わってる。そう思いたい。
あと柳瀬さんは世話焼きなんですよね。末永さんにチョコレートを食べろと迫るし、ステーキも食べろと言うし、水越さんの様子も気遣うし。もう裁判終わったらみんなでどっか遊びに行ってほしい。それぐらい私はこの五人が好きです。

『五人の執事』の感想(あと劇団の人たちについて)

『五人の執事』はパラドックス定数という劇団が2009年に上演した作品です(https://pdx-c.com/past_play/five-butler-2009/
配信はこちらから(https://www.xcream.net/item/17557

忘れたいことは忘れたままにしておいた方が幸福なのか、それとも現実に目を見開いた方が幸福なのか。

題名通り五人の執事が出てきます。玄関に立つ執事K、鍵を任されている執事N、日記を持つ執事B、主を騙る執事Q、給仕を担う執事R。登場する執事は全員名前がない。イニシャルにはそれぞれ意味があるんだけど、ネタバレなのでここには書きません。観たら分かるかもしれない。
とにかく決められた枠組みで動く執事の姿を追いかけるのが面白い。「この執事の動きはそういう意味だったのか」「この人物の口癖はそういうことか」と謎が徐々に明かされていく過程が楽しい。観れば観るほど発見が増えていきます。

※以下ネタバレ





何も考えないでいただけますか、と執事Qが執事Kに頼むシーンがあるんだけど、そんな完全に何も考えないというのは無理だよなと思った。人間考えたくなくても頭のどっかで考えてしまうものだし。それを執事Kに強いる執事Qと執事Rは酷だ。
そして「あれから十八回、空木の花は見事に咲き誇りました」という執事Rのセリフに愕然となった。現実から目を背けたまま十八年というのは中々重い。
印象に残ってるのは執事Qの「悲しみは人に任せてはなりません。まやかしに任せてもなりません」というセリフ。悲しみは自分で背負わないとどこかで破綻が訪れる。にもかかわらず「私が引き受けます」という執事Rに、それでいいの?それが職務なの?と言いたくなった。
面白いなと思うのは執事たちの関係。十枝さん演じる執事Qは西原さん演じる執事Rのことをよく思ってないんだなとか、執事Qは植村さん演じる執事Kにだけ露骨に態度が違うんだなとか。端から観てるとよく分かる。
『五人の執事』はとても好きな作品なんだけど、いかんせん分からない部分が多くて……。この解釈が合ってるか全然自信がない。せめて台本を読ませてくれ!となるんだけど、答えは別に要らないような気もする。あれこれ考えるのが楽しいので……。再演してくれないかな。





これは余談なんですが、私十枝さん演じる執事Qが日記を読む場面がめちゃくちゃに好きなんですね。内容ももちろんなんだけど、声のトーンも言い回しも語尾の震わせ方も全部好きで。そして西原さん演じる執事Rに遮られて向ける視線が最高。激昂するわけでもなく静かに「邪魔をなさらぬようにとお願いしたはずです」と言うシーンがもうはちゃめちゃに好き。
十枝さんは現在お休みされてるんですが、有料で配信されてる五作品には全部出演されています。特に私はインテレの山さんの大声が好き。あんなに聞いていて心地良い大声は中々ない。執事Qの大声もよかったですね……!

この際なので他の劇団員の人も紹介しますが、皆さん演技が魅力的なんですよ。有料で配信されてる五作品しか見てないけどそうなんです(ハマったのが今年の始めだった)。
まず一番好きなキャラが怪人21面相の白砂さん。西原さんが演じてるんですが推しキャラです。好きっていうより推しです。白砂さんについて語り出すと止まらなくなるのでここでは書かない。一言でいうと最悪で最高。
小野さんは東京裁判の末永さんがとても好きです。可愛くて格好良い。お願いだからチョコレート食べて……!と言いたくなる。巣鴨で分厚いステーキも食べてくれ。
井内さんはインテレの大杉栄が印象に残ってます。やたら飛び跳ねるし、笑い声がほぼ奇声だし、感情が全面に出てるキャラ。そしてそれが大杉栄のイメージとぴったり……!ラストは圧巻だった。あと三億円事件の宮内巡査部長もね!
植村さんは今作品の執事Kがよかったな~と思いました。佇まいが似合うというか。所作が綺麗。あと余裕を失っていく様子もよかった。怪人21面相の蓮見さんも印象に残ってます。あの場面の幸村に対する反応……!

なんか偉そうに色々書いてしまった……。パラドックス定数がとにかく好きだという文章でした。もっと観たいよ~~~~~

7月に読んだ本

『ちいさな桃源郷池内紀
西丸震哉の「カッパ山」と三宅修の「蒼い岩棚」が印象に残った。

『古川健 Ⅰ』古川健
劇団チョコレートケーキの戯曲集。大正天皇の人生を描いた「治天ノ君」は、親子・夫婦・天皇制の話が絡みに絡んでめちゃくちゃ面白かった。前半と後半で印象がガラッと変わるセリフがあるんだけど、それをこの場面で言わせるのか……!とゾッとしてしまった。生で観たいなぁ。

『蚊がいる』穂村弘
再読。読んでると時々しゃらくせえ~~~!という気持ちになるけど、面白いのでまぁいいかと思ってしまう。「殺人のマナー」がよかった。あと装丁がいい。

『二十世紀の怪物 帝国主義幸徳秋水 山田博雄訳
こんなに読みやすくて分かりやすくて面白い文章もないなと思った。言葉の選択と話の運び方が上手。でも元の文だとどうなんだろう。皮肉的な口調もそのままなのか気になるので、機会があれば比べたい。
帝国主義を破壊する方法について具体的な記述がないのは時代的に書けなかったからなのかな。引っかかる部分もあったので時間を置いて読み返したい。また感想が変わると思う。

『演劇入門』平田オリザ
演技の章が印象に残った。どういう意識で演じてるのか詳しく知りたい。

『もののはずみ』堀江敏幸
フランスの蚤の市や古道具屋で買ったものについてのエッセイ。少しずつ読み進めるのにぴったりな文章だった。こんなお洒落なテーマで鼻につかないのが不思議。

『ボクたちのBL論』サンキュータツオ 春日太一
「男が悩む姿を見たい」というのはめちゃくちゃ分かる!!!と思ってしまった。がんじがらめになってボロボロになった姿を虚構で見たい!内容としては聞き役の春日さんがハマっていく様子がよかった。反応が正直なところがいい。

『怪談生活』高原英理
日常に潜む怪談を作者が紹介する形式で進んでいく。畳に背びれを見る話がとてもよかった。今市子の絵柄で読みたい。

『インテレクチュアル・マスターベーション』の感想

『インテレクチュアル・マスターベーション』はパラドックス定数という劇団が2009年に上演した演劇作品(https://pdx-c.com/past_play/intellectual-2009/
配信はこちら(https://www.xcream.net/item/16434

日露戦争後、どんどんきな臭くなっていく時代の話。平民社に集う社会主義者七人が登場する。出版差し押さえ、集会の禁止、思想の弾圧。理不尽な現実に時には言葉を武器として使い、時には諦め、時には破滅的な手段で立ち向かう姿が描かれている。

この演劇作品を観るまで、社会主義というのは縁遠い世界のものだと思ってた。でも調べていくにつれ意外と身近なんじゃないか?とか、この考え方は覚えがあるな、とか感じるようになった。社会主義にこれだけの違いがあることも知らなかった。まだ分かってないこともたくさんあるので、これから勉強していけたらなと思う。

ちなみに『インテレクチュアル・マスターベーション』には実在の人物が出てきますが、あくまで作中の人物は作中の人物として考えています。以下ネタバレを含む感想です。





まず真っ先にそうだなと思ったのが「テロリズムの先に平和はない」という言葉。内山愚童が爆裂弾で人を殺そうとするシーンで出たセリフなんだけど、これは本当にそうとしか言えない。武力で対抗しようとする手段が間違っている。革命を起こすにはこの手段しかないみたいな考えだったけど、本当にそうか?と問い質したくなる。でも何をやっても弾圧を食らうこの時代だったら、そうしたくなるのも仕方ないかもしれない。ただ本当に内山愚童のやり方は間違っている。
で、このシーンは思想に命を懸けられるかという各々のスタンスが分かる場面になっている。この場にいる荒畑寒村、木下尚江、山川均は内山愚童の誘いに乗らない。木下尚江は思想上では中央を引っくり返したいと思ってても、行動はしない人。山川均は武力革命が現実的じゃないって分かってるのかな。だからやらない。
荒畑寒村は屋上演説シーンで「人間が人間の生きる邪魔をする今の世の中が間違ってるんだ。暴力は絶対に反対だ。生きろ!」と言っている。だから人は殺さない。
大杉栄は誘いに乗っちゃいそうになるんだけど、これは思想に命懸けられるからってことになるのかな。結局乗らないんだけど。荒畑寒村大杉栄に「お前も出来てないよ。人を失う覚悟」と言うのがいい。そんな覚悟しなくていいよ。
その点、内山愚童は覚悟ができている。大杉栄が「あんたには自我の代わりに意思が詰まってるんだな」と言うシーンがあるんだけど、この人は革命を起こしたいという意思しかない人だったんだなと感じた。どうしてそんな考えに行き着いたんだろう。

好きなシーンは色々あるんだけど、特に堺利彦が理想を語る場面はいいなあと思う。「同じ社会主義を掲げてもこれだけの違いがあるんだ。(中略)俺たちの違いの中にある違いを意識することが、社会の根っこのところにある平和とか自由とか平等とかに全部繋がんだよ。繋がらないか。いや、繋がったらいいなぁ」というセリフは本当にそうだったらいいのにな、という気持ちにさせる。
あとは幸徳秋水職業軍人の前で直接行動を訴える演説をする場面。時間にして多分十五分はあると思うんだけど、聞いてて全然飽きない。本気で言葉を武器として使ったらどうなるか、というのが如実に分かるシーンになってると思う。「戦争は経済に置いて損失であり、政治に置いて害悪であり、道徳に置いて罪悪です」と訴え、帝国主義の弊害を語り、「睦人と呼ばれる某は刺せば血の出る一人の男に戻るがよろしい」と結論付ける。この人は本当に言葉が上手いと思う。だから恐ろしい。鵜呑みにするのは危険じゃないか、と思う。
山川均が「直接行動を許せば日本は無法国家になる」と言う通り、暴力で何かを変えようとするのは間違ってる。ただ、そうしなきゃ変わらないと思ってしまう気持ちは分かる。こんな弾圧が続く時代なら尚更。ただ本当にやり方は間違ってると思う。
内山愚童が「意味や理由はあとに残された人間が考えるもの」って言ってて、本当にそうなのかな?と思った。言葉や行動を受けて咀嚼して解釈する。それは中々出来ることじゃないけど、思考は停止させたくないなと感じた。

正直『インテレクチュアル・マスターベーション』を最初に観たときはピンとこなかった。それは社会主義について全然知らなかったからだと思う。Wikipediaとか本とか読んで知識が増えるほど感想が変わる。知れば知るほど病みつきになるってこういうことなんだなと思った。やめられなくなる。

上半期振り返り

1月
えー、文フリに客として行ったな。買いすぎた。創作は何もしてない。あとは懇親会に出てる。もう二度とアフタヌーンティーは食べねえと思った。

2月
あんまり記憶がない。父方の祖父が亡くなっててんやわんやだったことは覚えてる。綱渡り状態だった。この辺あんまり思い出したくない。もちろん何も書けてない。

3月
後半になって本の市に出て楽しかった記憶はある。書き直したフリーペーパーが好評で嬉しかった。美容院に行ったりして大分元気。

4月
ほとんど歯医者に通っている。書いてはボツを繰り返してた気がする。「髭の待遇」をぼちぼち書き出してたような……

5月
奈良に行ったり天神さんに出たりライブ行ったりして浮かれている。楽しかったなという記憶。髭を書いては消し書いては消しを繰り返してた。

6月
髭を何とか完成させてオンイベ参加。ほとんどダウンロードされなくてへこむ。まあほとんど宣伝せえへんかったからな。後日ネップリにしたら何人かやってくれて機嫌が直る。
文芸WSに参加して自分の言語化の低さに落ち込む。でも褒めてくださったのでプラマイゼロむしろプラス。